EELS 『blinking lights and other revelations』('05)
b0061611_7172882.jpg先日の悲惨な脱線事故はまったく他人事ではない。もちろんJR福知山線が自分にとってものすごく身近な路線だったということもあるけど、それは単なる電車の事故ということだけでなくて、その背景にある社会全体の歪みみたいなものを強烈に実感したのと共に、そんな社会でも生きていかなければならないというある種の諦念みたいなものも感じた。確かに生活するのには便利な世の中にはなったと思うが、その分ひとつのミスが命取りになるギリギリの社会でもあるというか。人間なんてミスする生き物なのに。また、そもそもその便利さも結局は利益の追求の結果に過ぎないのであって、実はそんなに便利にならないでいいところまで便利になってきている。それをなんだかなぁと疑問に思う自分もいれば、そこでぬくぬくと生きている自分もいる。一体、生き易いのか生き辛いのか・・・。そんなことを考えていると、高田渡さんが亡くなってしまったことがますます残念に思われてきた、嗚呼。合掌。それと、これは不謹慎かもしれないけど、あの事故を見ていて思ったのは、人間って思いがけないところで突然死んでしまうのだなぁと。普段は死ぬことなんて考えて生活してないし、そんなの死ぬわけないと自然に思い込んでいる。でも、本当はいつ死ぬかなんて分からないし、いつ死んでもおかしくない。だから、やっぱりちゃんと生きなきゃならない。ちゃんと生きるとはどういうことかよく分からないのだけど・・・。

少なくともイールズの“E”ことMark Oliver Everettという人はちゃんと生きてるような気がする。

全33曲2枚組の大作となったイールズの新作『blinking lights and other revelations』は、またしても素晴らしい傑作だ。この作品は、イールズというバンド(?)としてのというよりも、Eのソロ・アルバムという印象だけど、それもそのはず、97年から8年(!)かけてじっくりコツコツと自宅の地下スタジオで制作されたそうである。97年といえば、『electro-shock blues』というとことん絶望的でとんでもなく暗い、でも、生きる希望に満ちた感動的な傑作を制作していたときだと思うが、この作品もその路線にあると思う。その『electro~』の後に『daisies of the galaxy』というやけに牧歌的で温かい作品があったのだけど、その2作を足して2で割ったような肌触り。Eの歌声は相変わらず物悲しく、彼の詩の世界も生死を描いたとてもヘヴィーなものだけど、それを包み込むサウンドがとにかくオーガニックで優しい。『electro~』の前後に、Eは次々と家族を亡くし独りぼっちになってしまった、世間的に見るとあまりにも不幸な境遇にもかかわらず、これほどまで優しくて穏やかなサウンドが生み出せるのは、それはやはり哀しみを十分に知っているからこそだと思う。本当にイールズの音楽を聴いていると救われる気分になる。

雑誌のインタビューを読んでいると、この作品はどうやらひとつの映画をイメージして作られたみたいだ。確かに、2枚合わせて約90分だから、時間的に見てもちょうど映画1本分であるし、詩も曲調もヴァラエティに富んだ33の楽曲がひとつの物語のごとく滑らかに絶妙に配置されているので、実際に映画を観ている感覚に近いような気がする。この作品を僕の大好きな映画で例えるなら、アキ・カウリスマキの『浮き雲』みたいな日常を淡々と描いた切なくも愛に満ちた人生劇という感じかな(ちなみに、カーネーションの『LIVING/LOVING』は『ペーパー・ムーン』のようなロードムービー)。『浮き雲』を映画館で観た時もそうだったけど、素敵な映画を観た直後の目を潤ませつつも思わず頬が緩んでニヤニヤしてしまうあの言いようのない幸福感、それと同じものをこの作品を聴いた直後に感じた。単純に、生きていて良かったなぁと思う瞬間、僕は嬉しい。

なんて書くとどこかとっつきにくい印象を与えてしまいそうですが、決してそんなことはなくて、純粋にポップスとしても十分に楽しめる作品です。間違いなくEはロン・セクスミスやエイミー・マンなどと並ぶ稀代のメロディーメイカーです。ともかく、この作品が2005年を代表する名盤であることは確実だし、これからもずっと聴いていける普遍性を湛えた素晴らしい作品だと思います。
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※ゲストに、トム・ウェイツ、ジョン・セバスチャン、R.E.Mのピーター・バックが参加してます。そういえば、萩原健太さんも言っているように、イールズの歌はトム・ウェイツに近いような気がしますね。あと、これもインタビューで言っていたのですが、Eは72年以降の音楽には興味が無いらしいです(確かデキシード・ザ・エモンズも同じようなことを言ってたような気が。僕もちょっとだけ共感)。あのどこかレトロで不思議なサウンドはそういうところから来ているのでしょうね。
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by kesuike6 | 2005-05-01 10:37 | ALBUM(SINGLE)
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