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Aimee Mann 『The Forgotten Arm』('05)
鈴木祥子さんの歌を聴いていると、どうしても思い出してしまうのはエイミー・マン。祥子さんももちろん好きだけど、僕はエイミー・マンに無性に惹かれる。女性の強さであったり弱さであったり、表現しようとしていることは二人とも共通していても、祥子さんの場合はそれがあまりにも感情的に迫ってくるので圧倒されて居たたまれなくなることがある(日本語だというのもあるけど)。一方、エイミー・マンはより控え目でクール、表には出さなくても心の奥底で燃えているタイプ。ただ、それだけに彼女の歌はどうしようもなく地味。でも、僕はその地味さがどうにも愛しくて。彼女の歌は僕の心にスーッと滑らかに穏やかに響いてきて、やんわり気持ちが落ち着いたり、じんわり切なくなったり・・・僕の生活の側にそっと居てくれる音楽。

Aimee Mann 『The Forgotten Arm』(\'05)_b0061611_11254517.jpgそんな彼女の最新作『The Forgotten Arm』も、相変わらず地味だ。これと言った突出した超名曲はないけど、全12曲一通り聴き終わると「嗚呼、素晴らしい・・・」と溜め息混じりに思わず口から漏らしてしまうトータリティーの高い傑作。そもそもトータリティーの高さは今までの彼女の作品でも当てはまることだけど、今作はさらに高い。それもそのはず、一つの物語を12篇の歌で表現しているコンセプト・アルバムだから。70年代アメリカを舞台にしたある男女(男はボクサー)の出会いと別れを描いたロード・ムーヴィー仕立てになっていて、音もその70年代の古き良きアメリカ音楽を意識した余計な装飾のないアーシーで骨太なバンド・サウンドで統一されている。それこそ女版ザ・バンドといった趣だ(ということはつまり、それだけで僕はこの作品が大好きということになるわけだが)。そして、彼女の歌は相変わらず素敵だ。これもきっと地味な印象を与える一因だろうけど、彼女の歌には起伏というものがあまりない、メロディーラインにしても音域にしても。時を刻む時計の針のように、淡々と流れて行く。なのに、何度聴いても飽きずにグッとくる。時の流れは一定でもその時々の感情によって速く感じたり遅く感じたりするが、それと同じように彼女の歌も淡々としているがゆえに聞き手の感情によって聞こえ方が変化する。やたらドラマチックで押しつけがましいだけの歌は自分の感情とピッタリ当てはまるときは良いが、それ以外だとうざったく感じるし飽きるのも速い。エイミー・マンの歌はいつ何時どのような感情でもどこかしらでフィットしてくれる。だから、彼女の歌は僕の生活の側に居てくれるんだろうし、僕はそういう歌がやっぱり好きだな。
by kesuike6 | 2005-06-08 12:22 | ALBUM(SINGLE)
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