The Kinks 『EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ』('72)
しつこいかもですが、ジャック達にホント参ってます。一色さんの書くメロディーはA級なのに歌とギターのおかげでB級になっちゃってる、そのなんとも言えないトホホ感が僕は愛しくてたまらないのです。レココレのレビューだったかに、66~68年75年前後のイギリスなら14位くらいにチャート・インするような曲ばかり入ってるという感じで評していて、なるほどうまいこと言うなあと関心しました。で、そんなジャック達を聴いていると無性に聴きたくなるのが、ザ・キンクス。英国の偉大なる捻くれ者バンド。僕はキンクス大好きなのですが、実は『Something Else』とTSUTAYAで借りてきてダビングしたシングル集しか持っていないという体たらくぶり。ということで、これを機に一枚買おうと、いろいろ吟味した結果購入したのがこの『EVERYBODY'S IN SHOW-BIZ(この世はすべてショー・ビジネス)』。ジャック達がきっかけなので、なんとなく有名どころを外したくなって、隠れた名盤的なものを選んでみたのですが、これが見事にハマってしまいまして…。



b0061611_152427.jpg『この世はすべてショー・ビジネス』はキンクス初の2枚組アルバム(CDは一枚ですよ)として72年にリリースされました。2枚組と言ってもちょっと変則的で、1枚目がスタジオ盤、2枚目が前作で名作『Muswell Hillbillies』の曲中心のライブ盤、という構成になっています。一粒で二度美味しい作品なので、ある意味キンクス入門編として最適なのかもしれないけど、どうだろ、この頃のキンクスはすっかりアメリカ音楽指向で、おまけにさっぱり売れなかった(米国で最高70位、英国ではチャート・インせず)ので、やっぱり内容としてはマニア向けなのかな。ただ、なんと言ってもこのアルバムにはキンクスの、いやポップスの歴史においても重要だと思われる超名曲「Celluloid Hero(セルロイドの英雄)」が収録されているのです。ハリウッド・スターに思いを馳せつつ、ショー・ビジネスの世界のうら悲しさを歌った感動的な大曲「セルロイドの英雄」、『この世はすべてショー・ビジネス』はこの一曲のためにあると言っても過言ではないでしょう。よって、スタジオ盤の頭9曲は、言うなればラストの「セルロイドの英雄」を引き立たせるための序章なのかも…。

そんなあまり陽の当たらない序章の曲たち、僕はなんか放っておけないのです。かつての若々しくてエネルギッシュなビートバンドの面影は皆無、むしろそれとは対極にあるようなほんわかのんびりゆ~るゆるの世界。なんだか頭にタオルを乗せて温泉に浸かってる気分ですな、あー極楽、極楽、いい湯だな、さぁさぁお猪口で酒をクイッと、かー旨い、旨いねぇ…。音楽的には、ボードヴィル調というか、ミュージック・ホール、あるいは場末のキャバレーという感じでしょうか。ホーン・セクション、フルート、スティール・パン、スライド・ギターなどの彩り豊かでなんとも牧歌的な響き、そしてレイ・ディヴィスの鼻にかかる気だるい歌声、あまりに心地よくて一気にやる気が失せます、まぁいいや、明日やればいいや、今日はひとまず終了。中でも「Hot Potatoes」って曲、好きだなぁ。この曲の歌詞に出てくる男、どうしようもなくダメなやつ。仕事なんて見つからなくていい、毎日ホット・ポテトだっていい、僕が欲しいのは君の愛なんだよ、いつも君と一緒にいたいんだ、オー・イエッ!でも、なんか憎めないやつ。「Sitting In My Hotel(ホテルに座って)」この曲、なんかジーンとくる。ロック・スターとして世界中を駆け巡るレイ・デイヴィスは、世間と隔離され唯一安らげるホテルの部屋に座ってこうつぶやく、本当の自分って一体?スターがゆえの孤独、僕は想像するしかできないけど、きっと寂しくて寂しくてたまらないんだろうな。それでもショー・ビジネスの世界で生きる以上、ステージに立てばスターでいなきゃいけないわけで…嗚呼。そんなことを思いながら2枚目のライブ盤を聴くと、こんなに煌びやかでゴキゲンなパフォーマンスなのに、どこか切なく聞こえてきたりして、なんだか泣けちゃうのさ。

ビートルズ『アンソロジー』のDVDをキハラさんがたまたま観たことがきっかけで、ジャック達の結成に至ったそうです。そして、僕はジャック達のアルバムを聴いて、キンクスを思い出した。時代なんか関係なく、こうやって音楽は繋がっていくのです。なんてね。
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by kesuike6 | 2005-09-27 01:53 | ALBUM(SINGLE)
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