大西ユカリと新世界 『昭和残唱』(昭和80年)
なんだか随分久しぶりに三千円を払ってCDを買った。僕は慎重派なのか単にケチなのか、よほど欲しいと思えるものでないと千円札三枚は出せない。ということはつまり、この大西ユカリと新世界の新作『昭和残唱』はよほど欲しかったということである。ユカリ姉さんが昭和の名曲の数々をカヴァーする、そんなの絶対悪いわけがないじゃない。

b0061611_22211067.jpg1.女王蜂のフーガ 【和田アキ子】 2.マンハッタンブルース 【青山ミチ】 3.待っている女 【五木ひろし】 4.横須賀エンジェル 【新曲】 5.Hold On! I'm A Comin' 【サム&デイヴ】 6.八月の濡れた砂 【石川セリ】 7.夏の日の想い出 【日野てる子】 8.釜山港へ帰れ 【李成愛】 9.番格ロックのテーマ 【キャロル】 10.涙のかわくまで 【西田佐知子】 11.かもめ 【浅川マキ】 12.ヨイトマケの唄 【丸山明宏】 13.ざんげの値打ちもない 【北原ミレイ】



いきなり怒鳴られる「ドスケベ!」…ごめんなさい。どうでもいいが、最近「スケベ」という言葉はほとんど使われなくなったような気がする。子どもの頃、僕もそうだったが、名前の最後に「すけ(介、助、輔etc)」が付くとそいつがスケベかどうかに関わらず自動的に「○○すけベ」(例:けいスケベ)と呼ばれたものだ。そして、みんな大笑い。子どもは無垢であるがゆえ残酷である。「エッチ」だとポップで可愛らしいが、「スケベ」という響きは本当にイヤらしい感じがするもの。漢字にすると「助平(助兵衛)」だもんな、傷つくよ。そしてまた、「スケベ」に強調語の「ド」が付いたりなんかすると、ますます殺傷力がアップし響きもどことなく古めかしくなる。他にも「ドアホ」に「ドブス」に…まぁなんて酷い。て、そんな話はどうでもいいのよ。

僕は昭和54年生まれの26歳、過ごした時間は昭和よりも平成の方が6年くらい長い。この中でリアルタイムで聴いた曲はチョー・ヨンピル版の「釜山港へ帰れ」(子ども心にもカッコイイ曲だと思った)だけだ。それなのに、このアルバムを聴いているとすっかり落ち着いてしまうのがなんか不思議で。考えてみると、僕にとっての昭和は小さい頃のわずかな記憶に後でテレビなどで知った昭和のイメージが加わったもので、ある意味で昭和以上に昭和なのかもしれない。そういう僕の昭和観にユカリ姉さんの人間臭い歌と新世界の生み出すイナタいサウンドはピタッと重なる。だから、ホッとする。

昭和歌謡のカヴァーなんて言うと、得てして歌い方を過剰に真似して雰囲気だけで終わってしまうものだけど、ユカリ姉さんの歌は何の気負いもなく実に自然である。彼女は昭和39年生まれで、リアルタイムで慣れ親しんだ曲ばかりを選んでいるはずだから、これらの曲は彼女にとっての鼻歌なのだろう。それにしては、どれもこれも救いようのない暗い歌だけど…。彼女は小さい頃から子どもらしくない大人びた歌ばかり歌うから、チビッコのど自慢では常に準優勝だったそうである(優勝は妹)。その後の人生も昭和歌謡のダークサイドの世界を地で行くかのような苦労の連続だったみたいで、それが理由かはわからないが、彼女の歌声はパッと映える(栄える)けどもどことなく哀しげである。どことなく哀しげ、彼女の歌が大好きなのはそこだ。

『昭和残唱』は、オリジナル曲を知っている知っていないに関わらず老若男女楽しめる作品だと思う。ていうか、昭和歌謡がどうとかそんなのはホントどうだっていいや、どうだっていい。とにかく最高に良い歌が聴きたいのなら、とりあえずこれ聴いてみて下さいよ、泣いて下さい。平成17年、いや、昭和80年を代表する一枚であることは間違いなし。

トマトジュースは真っ赤だよ 午前3時はアタシの時間 泣いてくれるなお父ちゃん
「ドアホ うちかて女やで たまには本気で好きになる時かてあるわ」
だけどあの人に何も言えない私

(「女王蜂のフーガ」)

※紙ジャケ仕様、中ジャケの網タイツ姿のユカリ姉さんスゴイです。ちなみに、ミュージックマガジンでは10点満点でした。あ、そういえば、大西ユカリと新世界も数年前に株式会社ハッスルを立ち上げて自力で活動してますね。株式会社ハリケーンもうまく遣り繰りして頑張って欲しいものです。
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by kesuike6 | 2005-10-24 22:23 | ALBUM(SINGLE)
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