徳永憲 『眠りこんだ冬』('00)
2月8日にリリースされる“いじわるシンガーソングライター”こと徳永憲の新作『スワン』(ジャケット画は黒田硫黄)は、おそらく2006年のベストアルバムの1枚になることは間違いないともう既に確信してます。前作は極シンプルな弾き語りアルバム(これも素晴らしかった!)だったけど、新作はがっつりバンドでやってるみたいなのでかなり楽しみです。とりあえず、ここで「コートを召しませ」(フルバージョン!)と「サンビーム」の2曲が試聴できるので、こっそり聴いてみてくださいな。

b0061611_0125618.jpgで、今回取り上げるのは、彼の2ndフルアルバム『眠りこんだ冬』。タイトルからも分かるように、まさに今の季節にぴったりな作品だと…たぶん、おそらく(この人、一筋縄ではいかないからね)。帯のコピーには“しっとりと殺す13曲”とあるけど、確かに13曲キラーチューンだらけではあっても、“しっとり”というのは良い意味で違うのではないかと…少なくとも僕は秒殺されたよ。前作『アイヴィー』での彼はどちらかと言うと外見はクールでも内面で燃えてるタイプだと感じたのだけど、この『眠りこんだ冬』での彼は内なる炎が容赦なくゴォゴォ吹き出ている、消防車が大至急必要なくらいエモーショナルな作品だ。アクが強烈でインパクトはあってもか細かった彼の歌声も随分力強く太くなり、それにともなってバンドサウンドもガツンと男臭くなった。最高だ。身震いする瞬間が何度もある純然たるロックアルバム。やっぱり僕はこういうのが聴きたい。



『眠りこんだ冬』は、“一大青春アルバム”だそうだ。青春って一般的にピュアで直線的なイメージが強いのだろうけど、彼の描く青春はどこか屈折している。僕も周りからよく天邪鬼と言われた人間だし(笑)、それだけに彼の青春ソングはリアルに響いてくる。“僕はきっと違う こいつらと違う いつかわからせてやる(「眠りこんだ冬」)”なんてことを、僕も口には出さないけど心の中では思ってたし。俺って一体何者?っていう思春期特有の超難問に答えなきゃならない、でも、自分で自分のことをいくら考えてもよく分からない。となると、こいつと俺はここが違う、あいつと俺はここが違う、と言ったように他人との差異を意識することで自分自身を具体化していく方法が有効だと気付く。が、アホなことに、僕はこの方法を変なふうに使ってしまった。“あいつがああならこうしよう こいつがこうならああしよう そいつがそうならどうしよう(「オカエリ・ファンファーレ」)”つまり、他人と同じことをしたくない、他人と違うことをするのがカッコイイと勘違いしてしまったのだ。例えば、先生がジョークを言ってみんなが笑っていても、僕は意地でも笑わなかった。英語の授業なんかで先生の後についてみんな一斉に朗読をする作業があっても、僕は密かに人より速く読んでいた。美術の授業で自画像を描いたとき、みんなが肌色で顔を塗っているので僕は緑色で塗った。まぁ気が小さい人間なので、これくらいのしょぼい抵抗だったけど(笑)。そもそも、音楽をマニアックに聴き始めたというのも、きっかけは他人と違う音楽が聴きたいという想いからだった。周りに音楽の話が合う人がほとんどいなかったって僕はつい言ってしまうのだけど、自分から進んでわざわざ孤独な方へ向かっていったのだから当たり前のことであるわけで、自業自得。でもまぁ、そのおかげで楽しい世界が見つかったし結果オーライ、今はあの時天邪鬼で良かったかもと思ってたり。もちろん、暗い青春時代ではあったけど…いや、そんな暗くないか。屈折していても青春は青春だし、ピュアがゆえに曲がっちゃうこともあると(良いように言いすぎか!?)。

て、何でこんなことを言ってるのかよくわかりませんが、この作品を聴いていてふと思い出したわけです。ということはつまり、僕にとってすごく大切な作品だということです。僕と似たような青春を過ごした人はグッとくるんじゃないでしょうか…そんな人いないか(笑)。

  安物ギターの弦が切れ
  僕は内股ジャンプをきめる
  そして彼女の名を叫び
  その一瞬を完璧にする
  アンプはでかい方がいい
  悩みがあるなら新しい方がいい
       (「マテリアル・イシュー」)

※気が付いたら、曲について何も話していないよ。全曲良いけどとりわけお気に入りは、ボブ・ディランみたいな熱いフォークロック「フレンド(オア・ダイ)」、淡々とした出だしから曲が進むにつれて徐々に盛り上がる「工業都市のため息」、スケール感のある魂のロックナンバー「マテリアル・イシュー」あたりかな。ちなみに、参加アーティストは、坂田学、吉川真吾、寺谷誠一、渡辺等、鶴来正基、ライオンメリイなど(敬称略)。
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by kesuike6 | 2006-01-15 00:14 | ALBUM(SINGLE)
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