荒木一郎 『君に捧げるほろ苦いブルース』('75)
最近、何だか喫茶ロックづいていまして。寝る前はいつも喫茶ロック本をパラパラめくり、数々の素敵なジャケットを眺めてうっとり、添えられた解説文は簡潔かつ音楽愛を感じる文体で、僕もこんな風に書けたらいいなぁと思いながら就寝します。やっぱりよく眠れます。結局のところ、僕はこの時代の音楽が本当に好きなんだと思います。アンタまだ若いのにそんな古臭い、と言われるかもしれませんが、僕にとっては今世間で新しいとされているものよりも余程新しい音楽なのです。まぁそんなことはどうでもいい話なのですが、とりあえず今年は70年代の日本人アーティストを中心にレコードを集めようと、(あくまでも)今のところ心に決めております。なので、もう既にぷんぷん臭い立っていますが、エントリーが必然的にその辺の音楽になることが多いと思われます。どうかご勘弁を。



b0061611_3535892.jpgということで、今回ピックアップするのは、荒木一郎さんです。荒木一郎とはあまりにもありふれた名前ではありますが、こんなにユニークなアーティストは日本中どこ探してもいないのではないでしょうか。俳優でありミュージシャンであり音楽プロデューサーであり作家でありマジシャンであり切手収集家であり将棋指しであり、ありありづくしのマルチアーティスト。そのプロフィールを見ただけで頭がクラクラ、すっかり興味津々なのです。ミュージシャンとしては、60年代に「空に星があるように」「今夜は踊ろう」「いとしのマックス<マックス・ア・ゴー・ゴー>」などの大ヒット曲を生み出しNHK紅白歌合戦にも出場、日本人シンガーソングライターの草分け的存在と言われています。ちなみに、「あしたのジョー2」のサントラを手がけたのもこの人です。

b0061611_3542331.jpgそこで、今回紹介するのは70年代トリオレーベル時代の代表作と言われる7枚目のアルバム『君に捧げるほろ苦いブルース』です。と言いながら、実のところ僕はこれしか聴いたことがないので、ホントにこのアルバムだけの印象で喋りますが、至るところから言い知れぬ才気をジワジワ感じる極上のポップアルバムです。メロディーはつい口ずさみたくなるシンプルで素朴なちょっぴりドラマチック歌謡曲調で、アレンジやコーラスは小粋でユーモアに溢れていてどこか懐かしくもありチャーミングです。ニルソン歌謡曲を歌う、そんなイメージが頭に浮かびました。そして、荒木さんが描く詩世界は、『君に捧げるほろ苦いブルース』というタイトルの通り、物悲しくもハードボイルドな大人の恋の物語、ただでさえカッコイイのですが、その世界観をしっかり表現できる荒木さんの歌声がまた最高にカッコイイのです。ぶっきらぼうだけど優しい男の哀愁と色気に満ちた歌声、僕はすっかりメロメロです。

70年代最大のヒット曲の表題曲「君に捧げるほろ苦いブルース」はもちろん切なすぎるほろ苦い名曲ですが、このアルバムの中で僕が一番好きな曲は「荒木一郎の恋歌」です。ちょっぴりムード歌謡の匂いがする美しいバラードで、気の利いた洒落たアレンジによってコッテリしすぎてないところが逆に胸がじんとします。ワワワワーコーラスや時々アクセントで鋭くビシーッと鳴るハイハット、間奏の変テコなシンセサイザー、どことなくトッド・ラングレン的センスを感じたりします。他にも、オールドタイミーでほのぼのした「寒多米利のツイスト」、寂しげなフォーキーカントリー「6月」、キュートな女性コーラスが微笑ましいポップソング「ジャニスを聴きながら」、妙に耳にこびりつく獄中ブルース「どっちみち檻の中」、力強くも穏やかなホーンセクションの響きが胸を熱くする感動的なラストソング「りんどばーぐスペシャル」などイイ曲満載、まったくもって素晴らしい作品です。

このレコードを聴く限り、荒木一郎さんのポップスはそれこそ大滝詠一さん並に評価されてもいいんじゃないかと思っています。そうです、僕はすっかり荒木マジックにハマってしまいました、これからさらなる研究を重ねるつもりです。荒木さんのLPが数種類あるレコード店を知っているので、コツコツ集めていきます。もちろん、その店はどこか教えません・・・て、別に誰も知りたくないか(笑)。

※2000年に全アルバムが紙ジャケでCD化され、2001年に忌野清志郎やCKBなど豪華ゲストを迎えた新作、2002年にライブアルバムが出ています。ちなみに、以前取り上げた『喫茶ロック~ドライブ日和~ショーボート/トリオ編』にも「ラスト・テーマ」「言葉」の2曲が収録されています。
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by kesuike6 | 2006-02-02 03:57 | ALBUM(SINGLE)
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