ラリーパパ&カーネギーママ 『Good Times Are Comin'』('01)
さぁ、ここらでググッと現在に近づきましょうかね。と言いながら、取り上げるのはあの時代のイイ匂いを強烈に放つラリーパパ&カーネギーママだったりするわけだが。先日の青山陽一インストアライブで、久しぶりにチョウさんの歌を聴いて、やっぱりホンマにええ声やわ~この人は大阪の宝や、なんてことをしみじみとまたもや思い知らされた。年明け早々に盟友キム・スチョリさんの脱退の知らせが届いて、僕は心底驚いたのだけど、それでもチョウさんの歌はますます深みを増して穏やかで、ラリーパパの未来はまだまだ果てしないなと不思議と期待感が膨らんだ。お世辞抜きにこの時代にラリーパパのような深遠な歌心のあるバンドが存在してくれていること自体、奇跡のようなことだと思うし、この奇跡のようなことがずっと続いてくれたら、音楽ファンとしてこんなに嬉しいことはない。



b0061611_17104381.jpgさて、今回紹介する作品は、彼らの1stミニアルバム『Good Times Are Comin’』である。雪の中黒い煙をモクモク吐き出しながら力強く走る機関車のジャケットにこのタイトル、並々ならぬ意気込みを感じるが、それに違わず内容も気合い十分の素晴らしい出来。たった4曲とは言えフルアルバム並の充実感、彼らは最初から凄かった。当時のメンバーは、チョウ・ヒョンレ(vo,g)、キム・スチョリ(vo,key)、キム・ガンホ(g,cho)に現bonobosのリズム隊である森本夏子(b,cho)と辻凡人(d,cho)からなる5人編成。1stにして既にいぶし銀な埃舞い散る土臭いサウンドではあるが、演奏自体は所々若気の至り的荒削りな部分も垣間見られ、エネルギッシュで勢いがあって実に痛快なのである。

まずは名刺代わりの一発「冬の日の情景」はいきなりの名曲、改心の一撃という感じだ。アコギのイントロからチョウさんと森本さんとの絶妙なユニゾンボーカル、ものの30秒でこいつら只者じゃないなと思わせる強靭な歌の説得力。そこへブルージーで男気溢れるガンホさんのエレキギターが切り込んできて徐々に熱を帯び、スチョリさんの跳ねまくるピアノと凡人さんの大地をガシッと踏みしめて重心低く突き進む力強いドラムが重なり合って、分厚くぶっといグルーヴが出来上がる。まさにジャケットの機関車のごとくド迫力な演奏に、僕はうぐぐぐぅと唸るしかない。2曲目「ふらいと」は、日曜日の昼下がりに暖かい陽だまりの中でまどろんでいるかのような心地好い穏やかなナンバー。とは言っても、美しいハーモニーに混じって聞こえてくるチョウさんの歌はやっぱりここでも熱くソウルフルだ。3曲目はガラッと一転して、ファンキーで踊れる「まちとまち」。森本さんのベースラインと共にチョウさんのボーカルもうねるうねる。“ぐるぐるぐる”を“Groove Groove Groove”、“しんしんしん”を“Swing Swing Swing”、“まちとまち”を“Much Too Much”というように、日本語を英語風に歌うことで言葉にドライヴ感が生まれノリノリだ。ちょっぴりユーモラスでお茶目なコーラスもすこぶる楽しい。ラストは「風に乗って」、果てしなく広がるスケール感があって優しくて切なくてただただ感動的な超がつく名曲。風街住人の想いをしっかり受け継いだ歌詩やメロディーは、はっぴいえんど「風をあつめて」の2001年版と言ってもいいかもしれない。スチョリさんの言葉ひとつひとつを慈しむように歌う丁寧なボーカルにそっと側に寄り添うささやかなコーラス、僕はもう涙腺が緩みそうなのだけど、最後の気持ちの昂ぶりをどうにも抑えきれず爆発したかのような混沌としつつ盛り上がるバンドアンサンブルがあまりに切なくてやりきれない、泣くしかない。歌っていいなぁと聴く度に思えるし、僕の人生においてすごく大切な歌だ。

 今なら跳べるような
 そんな馬鹿な気がするんだ
 シャツ一杯に風を孕んで
 ただ一言「どうでもいいさ・・・」
            (「ふらいと」)

※前にDIGを立ち読みしたら、マーク・ベノがインタビューでラリーパパがバックバンドを務めた日本ツアーのライブ盤を出したいと言っていました。何とか実現してほしいです。
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by kesuike6 | 2006-02-03 17:11 | ALBUM(SINGLE)
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