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原田真二 『NATURAL HIGH』('79)
原田真二 『NATURAL HIGH』(\'79)_b0061611_15412178.jpg人気絶頂時の彼は全部の歯が虫歯になってかぶせた銀歯も虫歯になるくらいチョコをもらったんだろうな・・・なんてことをバレンタインデーに独り思いながら、投売りされていた原田真二の2nd『NATURAL HIGH』のLPを買った。義理チョコより安そうな300円、なんとも切ない。ジャケットに思い切り値札が貼り付いている、キレイに剥がそうとするも失敗、見事にジャケットの色が剥げ落ちた・・・嗚呼、NATURAL LOW。(←“d”の下の白いとこがそれ)



男前だったりカワイイ顔をしていて損することはまず有り得ない。恋人がいると思い込まれる、そんなのは無理矢理の急場しのぎの言い訳で損ではない。ただ、この原田真二に限ってはその愛くるしいルックスのせいで随分と損をした稀な人である。彼のミュージシャンとしての才能はハンパではないのに、アイドルというレッテル(もちろんそのおかげで恩恵を受けた部分もあるだろう)が巨大化しすぎて、その本質が見えづらくなってしまった。本当に評価してもらいたいところを評価されない、いや、それ以前に評価まで至ってくれないというのは誰だって相当に辛いこと。とりわけ、彼のような才能豊かな人になればその苦しみは計り知れない。そんな苦くもどかしい想いをした彼はシングル「Our Song」で静かに力強くアーティスト宣言をする。が、皮肉にも、彼がミュージシャンに徹すれば徹するほどファンが離れていくことに・・・。

というのは、一般的によく言われていること。幸い僕は完全に後追い世代(このアルバムがリリースされた時、僕はお母ちゃんのお腹の中)なので、アイドルだった彼のことは実感として知らない。だから、僕は最初から何のしがらみもなくアーティスト原田真二を堪能できた。ビートルズ、ポール・マッカートニー、エルトン・ジョン、バッドフィンガー、ラズベリーズ・・・洋楽ロックの最もポップな美味エキスが彼の音楽にはごく自然に溢れ出ている。その上、彼の紡ぐ日本語はその洋楽メロディーに何の違和感も無くはまり込み、実にカッコ良く耳に響いてくる。それに、伸びやかでスウィートで芯の強いポール似の歌声がまた素晴らしくて、繰り出されるシャウトは最高にロックンロールだ。もちろん、彼のピアノプレイもすこぶるグルーヴィーでブリリアントだし。どうやら天は彼に二物も三物も与えてしまったようだ、神様イケズ・・・。

大ヒット1st『Feel Happy』に続くこの『NATURAL HIGH』は、全編L.A.レコーディングで現地の腕利きセッションマンと作り上げた本格的ポップンロールアルバム。いきなりウィングスやスティーヴミラーバンドっぽい組曲風インストから始まるあたりは並々ならぬ気合いを感じる。そこからは息をつく暇も無い怒涛のポップ攻撃開始。痛快に盛り上がるパワーポップ、じわじわボディーブローのようにクるミドルテンポのグルーヴィーナンバー、しっとりと泣かすバラードにビートルズ風おもちゃ箱ポップ、ポップロックこんにちは!まるで万国博覧会。私的一番の盛り上がりは、「SWEET BABY」アルバムバージョンの後半ドラムだけをバックにサビを力強く歌うところ。めちゃくちゃ痺れる。当時21歳の若さでこのセクシーさ、やはり只者ではない。B面ラストの愛すべき佳曲「NATURAL STREAM」が終わった後に川の流れの音が聞こえてきて、それまでのポップ攻勢でHIGHになった気分がスーッと穏やかに落ち着いていく。この瞬間が何とも清々しい。それをまた味わいたいとレコードをひっくり返して、A面の最初から聴きたくなる。とっても素敵なレコードだと思う。

※直枝さんが高校生のときにフォーライフの第1回オーディションにテープを送ったそうで。結果は残念ながら不合格、そのときの優勝はひとつ年上の原田真二。でも、直枝さんはその後彼のことを嫌いになるどころかファンになっちゃったそうで、あのカーリーヘアも真似したとか!?【『KEY STATION# Vol.1』の直枝政広×江口寿史対談より】
by kesuike6 | 2006-02-15 15:49 | ALBUM(SINGLE)
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