カーネーション 「市民プール」('95)
↓は聴いた直後の感想である。確かに『WILD FANTASY』は全曲シングルカットOK史上最高にキャッチーな極めて完成度の高い傑作、これが売れなかったら嘘だろ!とも思う。ただ、僕個人的な好みから言うと、その風通しの良さが逆になんだか物足りなくて、心の奥底でガツンとくるものがあまりなかったなぁと言うのが正直な感想である。なので、全曲レビュー今回はおあずけ、まったく意地の悪いファンでごめんなさい。

と言っても、カーネーションを嫌いになるはずもなく、なんだかんだで好きなのか『WILD FANTASY』もよく聴いてるし過去の作品も相も変わらず毎日のように聴いている。ていうか、なんたって夏だから!ニッポンの夏と言えば、僕にとってはチューブでもサザンでも山下達郎でもなく、圧倒的にカーネーションである。だって、ニッポンの夏は暑いし気だるいし、出来れば外になんか出たくない、窓の外から聞こえてくるミンミン鳴く蝉の声をBGMに扇風機に吹かれながら冷たい麦茶を片手にテレビで高校野球を観るのが僕の夏休み、海やリゾートなんて言葉は無縁なのである。そんな僕のロンリーで怠惰な夏休みをリアルに歌にしてくれるのはカーネーションしかいない。「Holiday」「三丁目の夏」「The End of Summer」「サマーデイズ」「Happy Time」「1/2のミッドサマー」「コズミック・シーのランチ・タイム」「レオナルド」「ドラゴン・シャフト」「愛する言葉-Summer Children-」などなど眩暈がするようなキラーサマーチューン目白押しだが、その中でも僕が一番グッとくるというか即死するのは「市民プール」という曲である。

b0061611_18364433.jpgこの曲、何かの雑誌で“絶頂期のスティーヴィー・ワンダーのようだ”と評されていたことを記憶しているが、大野由美子さんによるスティール・パンの夢見心地な響きが印象的な気だるくも心地好いほんわかグルーヴィーナンバー。その心と脳みそのトロけ具合は、カーネーション流はっぴいえんど「夏なんです」なんて言い方が出来るかもしれない。闇雲に暑苦しいわけでなく闇雲に爽やかなわけでもない、つまり、「市民プール」は僕にとって完璧なニッポンの夏ソングなのだけど、同時に究極のラヴソングでもある。とにかく、この曲の直枝さんの歌詩がホント切なくて、狂おしくて、ウルッときて仕方がない。主人公の男の子が真夏の何気ない日常の中でふと思い出すのは大好きなあの娘のことばかり、今すぐ彼女に好きだと伝えなきゃ、でも伝える勇気がない。そんな悶々とした葛藤が夏の暑さも手伝ってますますドロドロと渦巻いていく・・・。で、このまま終わってしまうと、どうしようもなく情けない奴だと救いようがないのだけど、直枝さんが選んだ最後のフレーズはこうだ。

“ほら 風が少しでてきた”

・・・なんかもう泣けてくる。この先彼がどうなるのかはっきりと説明してくれているわけではないけど、微かに光が見える。映画でも小説でもそうだが、僕はあからさまなハッピーエンドよりも、こうやって少しだけ希望をちらつかせてくれるエンディングの方がはるかに感動を覚える。だって、些細なことの方がよりリアルだから。僕の大好きな映画アキ・カウリスマキの『浮き雲』は澄み切った青空に白い雲がふんわり浮かんでいる映像で幕を閉じる、あのどうしようもない幸福感がこの「市民プール」にはある。
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by kesuike6 | 2006-08-06 18:45 | CARNATION
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