青山陽一 『DEADLINES』('06)
『WILD FANTASY』で感じた違和感は今日のテンション高い白熱ライヴを観てもどうしても払拭されなかった、嗚呼、僕が今一番聴きたい心地好い音楽とは違うところにとうとう行っちゃったのかなぁ、と一抹の寂しさを感じて、ちょっと元気無くしたり・・・。

b0061611_19503150.jpgというのも束の間で。青山陽一『DEADLINES』がそんなモヤモヤをはるか遠く彼方に吹き飛ばしてくれた!それはそれは豪快に!嗚呼、なんたる名盤で怪盤!青山さんはいつだって僕のツボは外さないが、これはもう何ちゅうかキャッチャーミット1ミリも動かずど真ん中どストライク!そうだ、思えば、ドラゴンズ山本昌が41歳1ヶ月でノーヒットノーランを達成した時にそんな予感はあったのだ、というのは思い切りこぎつけだが、しかし、それはまさに山本昌の巧みでニクい投球術のごとく、『DEADLINES』で青山さんが涼しい顔をしながらも気迫十ニ分に投げ込んでくる魔球は、打者がよし来たッ!と思って振りにいっても、微妙にタイミング狂わされ芯を数ミリ外され凡打の山チョモランマ、そして気が付けばノーヒットノーランどころか27個のアウトをたった27球で仕留める超完全試合、そんなとんでもない偉業を成し遂げたにも関わらず、平然とあまりにさり気なく、青山さんは顔や首筋にうっすら滲んだ汗を青いハンカチで丁寧に拭きながらマウンドを降りていく・・・そんな凄味。

嗚呼、また野球の喩えになってしまったので、仕切り直し。前作『ODREL』から2年ぶり通算10枚目のアルバム『DEADLINES』は、一応青山陽一ソロ名義ではあるけれど、そのサウンドは重厚で濃厚な完全なるバンドサウンドなので青山陽一&The BM’sと言い換えた方がむしろしっくりくる(ひょっとして全曲バンド編成というのも初めてではないだろうか?)。もちろんバンドサウンドに関して、青山さんはいつでも拘っていると思うのだけど、今作はとりわけバンド!バンド!バンド!極めてライヴ盤に近い仕上がり。『ODREL』でのできるだけ音数を減らすことで生まれた生々しいファンキーグルーヴは、さすらいの女ドラマー中原由貴さんの加入で一段とシャープかつ図太くなり、それに触発された他のメンバーも負けじと応戦自己主張、これほど全てのパートに見せ場があるアルバムと言うのも珍しいかもしれない(僕はもう既にエアギター、エアベース、エアドラム、エアピアノやっちゃいました)。リズムとリズムの絡み合い、音色と音色の絡み合い、それはもう絶妙の一言、とてつもなくシンプルなのにとてつもなく豊饒な旨味、いやホント、The BM’sは今日本で一番美味しいバンドだと思う。そして、青山さんのソングライティングもますます磨きがかかり、特有の謎めいたコード感はより一層ポップに煌いていて、世界中探してもどこにもない聴いたことないキャッチーさで溢れている。歌ってもめちゃくちゃ気持ちがいいんだ、これが。とにかく、大音量で聴いて、歌いまくって踊りまくって、心の底から最高のロックアルバム誕生!



1.ジャガーの爪
アルバム1曲目にふさわしいワクワクするようなファンキーチューン。イントロのまさにジャガーの爪のような鋭いギターカッティングと小刻みに連打されるピアノのビート、僕は開始わずか20秒であっという間に心臓をグワシッと鷲掴みにされ、一気に興奮と熱狂の坩堝へ直滑降。

2.休符を数えて生きるのは
跳ねる軽快なピアノと豪快なホーンセクションに彩られたニューオリンズビートなミドルチューン。久保田麻琴と夕焼け楽団の魅力に取りつかれてから、ますますニューオリンズ含めアメリカ南部に想いを馳せる今日この頃、こういう曲はそりゃあもうたまらないでしょ。そして、この曲の作詞はキリンジ堀込高樹氏、そう言えば「千年紀末に降る雪は」みたいなタイトルだ。堀込さんは学生時代のブラスバンド部の友人のことを詩にしたそうだが、「それにしても、なんで高樹くんの友達の歌を僕が歌わなきゃいけないんでしょうかねぇ(笑)、でも、まぁ面白いからいいんですけど。」と青山さんはこの前のライヴの時に仰ってました。

3.Blow Wind Blow
トュルットゥットゥットゥットゥットゥー♪春のウララカなそよ風のような軽やかな曲だなぁと気持ち良く揺れていたら、後半に進むにつれてなんだか雲行きが怪しくなってきて、最終的には巨大台風が襲ってきて家の屋根は吹っ飛び木々はなぎ倒され海は大荒れ甚大な被害。それもこれも中原さんのドラム、完全にタガが外れて暴走しまくると、青山さんのギターソロも体温急上昇。いやぁもうサイコー!こんなロックンロール台風ならいくらでも吹かせて欲しい。

4.March For March
クールに燃える変則リズムなインスト曲。鹿島さんのウッドベースがうねりにうねり、玄一さんのペダルスティールが不思議な浮遊感を演出、まるで荒れ模様の海に漂っているような気分、船酔い必至。

5.夏らしい
夏!と言い切らず、夏らしいと曖昧に言ってしまうところが実に青山さんらしい。この前取り上げた「Hideaway」の続編的な、フォーキーで気だるくメロウなニッポンの夏ソング。ジリジリとアスファルトを焦がすような青山さん入魂のスライドギターソロが聴き所。

6.20 Minute
これまたBM’sブラス隊大活躍のスケールのどでかいアッパーチューン。途中で一旦クールダウンし、ギアをもう一度入れ直してグググッと加速していく曲展開が痺れる。書き置きの字が小さくて読めない、蚊に刺されても気付かない、客人の言ってることが聞き取れない、娘のメールが謎の文字だらけで意味不明・・・と、時代に置いてきぼりになったしがない中年男の悲哀をユーモラスに描いた詩がまた可笑しくてたまらない。

7.吉祥寺デイズ
千ヶ崎さんのブリブリ唸るチョッパーベースのリズムが腰にへばりついて離れない粘っこいファンキーナンバー。ていうか、これぞファンクでしょ!汁たっぷりねっとりエロくて、さっきから鼻血が止まらん。

8.Cherry Blossomは今
怪しい色香漂うムードから始まり徐々に熱を帯びていく、どこか物語性を孕んだ曲展開がめちゃくちゃクールで、その上ムーンライダーズ鈴木慶一さんの幻想的でアダルトな詩が見事にマッチング、そんなめくるめくハードボイルドな歌世界に僕はただ酔いしれるだけ・・・。

9.Blind Touch
などと夢見心地な余韻に浸っていると、突然雷鳴のようなドラムが鳴り響く、一気に目が覚める。あーうるさい!笑っちゃうほど騒がしくて馬鹿馬鹿しくて、あーうるさい!最初、痴漢の歌かと思ったけど、違うよね?

10.Jamparica
2曲目のインストナンバー。ハモンドオルガンの奇妙な響き、突如聞こえてくるフュージョンぽいギターの音色、ほのかにラテン風味のリズム、一体どこの国の音楽なのかよく分からない。スティーヴ・ウィンウッドを意識してるのかもしれないけど、とにかく謎だ。

11.Seven Deadlines
アルバム表題曲?どこまでも気持ち良くグルーヴィーでカッコイイ曲なのに、サビの決めフレーズが“社会の窓開いていた”だから、もう踊りながら笑うしかない。何度も出てくるティロリロリロリロ~っていう印象的なギターフレーズ(レス・ポールうんぬんって、これですよね?)を聴いて、僕はトッド・ラングレンの「Bleathless」というインスト曲が思い浮かんだ。

12.月曜のバラッド
2枚組ベスト盤『Broken Words And Music』にも収録されていた曲のバンドバージョン。僕はベスト盤のバージョンの方もとても気に入っていたのだけど、こちらもまた違った味わい深い仕上がりで素晴らしい。どことなくトラッドな香りのする美しいメロディーがペダルスティールの流麗な響きと混ざり合ってより一層艶やかさを増し、じんわりと穏やかに耳に心に入り込んでくる。聴く度に沁みてくる本当にいい曲だなぁと思う。

これだけライヴが観たくてウズウズするようなアルバムを作ってしまったのだから、The BM's大阪ワンマンライヴほんま頼みます!

※ちなみに。上原ユカリさんははっぴぃえんどのファーストと仰ってて、なるほどなぁと思ったのだけど。黒く渦巻くグルーヴ、音の端々から滲み出る熱気と気迫、饒舌なメロディー、時折聞こえてくる変な歌詞・・・僕が真っ先に思い出したのは『BAND WAGON』でした。
[PR]
by kesuike6 | 2006-09-21 19:50 | ALBUM(SINGLE)
<< 日々レコード 青山陽一 『DEADLINES... >>