井上ケン一 『LAZY BABY KENI』('76)
だから、オーリアンズの二人の饒舌ギタリスト、ジョン・ホールとラリー・ホッペンのコンビはホント痺れるほどカッコイイのだけど、じゃあ、日本人バンドでそんなにも最高なギタリストコンビを擁するバンドと言えば、僕なら真っ先に久保田麻琴と夕焼け楽団、つまり、藤田洋麻&井上ケン一の熱血泥んこコンビが思い浮かぶ。つうと言えばかあ、ぴったり息の合ったコンビネーションはもちろん素晴らしいし、さらに夕焼け楽団のライヴ盤を聴いていると、ほとんどの曲で二人それぞれのギターソロコーナーが設けられていて、麻琴さんが「ヨウちゃん!」と一言発すれば、洋麻さんがスライドを豪快にキめ、「ケンちゃん!」と声がかかれば、ケン一さんがぶっといレスポールを轟かせる、言っちゃえばものすごくベタな展開なんだけど、でも、どうしたって盛り上がっちゃうし嬉しくて嬉しくてニヤニヤが止まらない。やっぱさぁ、ロックバンドはエレキギターでしょ!なんていうあまりにも単純な感想をあまりにもあっけらかんと言わせてしまうカトちゃんケンちゃん、ではなく、ヨウちゃんケンちゃんはそりゃあもう黄金コンビとしか言いようがないのだ。

b0061611_11341153.jpgという流れで、今回紹介するのは、そんなケンちゃんこと志村、いや、井上ケン一さんの1stソロアルバム『LAZY BABY KENI』。夕焼け楽団での血気盛んな熱いギタープレイとは真反対の、まさにレイジーでとろけるようなアコースティックラグタイムブルース集。“Ladies and gentlemen! Keni ga ima asobiyorunoyo.”という謎の外人男のお茶目な掛け声の後始まる1曲目、超スタンダードナンバー「A列車で行こう」を文字通りラグタイム調にアレンジしたほんわかインスト「A列車のラグ」を聴いただけで、僕はいつだって想像しうる限り居心地の良い南の島に行くことが出来る。それは決して日本人観光客だらけの騒々しいリゾートアイランドではなく、旅行社のパンフレットにはどこにも載っていない、しっかりと人が息づき生活している南の島(だから、行くというより住むという感覚かな)。というのも、ケン一さんの朗らかでのほほんとした歌声と心穏やかにつまびかれるギターの音色が究極に人間臭いから。僕はケン一さんには一度も会ったことがないけれど、きっとこの作品から感じる印象そのままの人なんだと確信できる、つまり、嗚呼、何て素敵な人なんだろう(もちろんルックスもね!日本のジェリー・ガルシア・笑)。全10曲中オリジナル3曲ほとんどがカヴァー曲で構成されていて、どれもホント魅力的なのだけど、何と言っても一番の聴き所(なんて力んで言うことでもないが)はビートルズ「Honey Pie」の日本語カヴァー「ケンちゃんのハニーパイ」だろう、ただでさえユルい曲なのにさらにユルユル、ケンちゃんが付けたとぼけた味わいの日本語詩はポールのユーモアをちょっぴり超え、どこの誰がどんな気分で聴いてもハートウォーミングな気持ちになること請け合い、実に名(迷)カヴァー。

よし、決めた。もし無人島で3日間だけ生活するのなら、『LAZY BABY KENI』を持って行こうと思う。
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by kesuike6 | 2006-10-06 11:37 | ALBUM(SINGLE)
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