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Root is One~歌うギタリスト達の宴<大阪編>-LIVE REPORT-
Root is One~歌うギタリスト達の宴<大阪編>-LIVE REPORT-_b0061611_20343554.jpg青山陽一 / 田中拡邦 / 鈴木茂
with The BM's 【伊藤隆博(organ) / 中原由貴(dr)】
2007/02/25(Sun)@シャングリラ
START 18:30

ビートルズを聴けば聴くほど、ジョージ・ハリスンの曲に惹かれてゆく。はっぴいえんどを聴けば聴くほど、鈴木茂の曲に惹かれてゆく。ひょっとすると、僕は歌うギタリストが好きなのかもなぁと思い始める。そして。鈴木茂イズムを受け継いだ青山陽一と田中拡邦によるジョージのカヴァーから始まり、茂さんのあのギターあの歌声を目の前で浴びたこの日、僕はやっぱり歌うギタリストが好きなんだと確信した。ロックという音楽は、ギターをガツンと弾いてしっかり歌う、それがまず基本であり、また人の心を動かし踊らす最も重要な要素なんだと改めて思い知らされた一夜だった。嗚呼、ロックってエレキギターって素晴らしい。

それにしても、三人とも同じストラトキャスタータイプのギターでありながら、三者三様、それぞれの音色の違いに心底驚いた。田中くんの水色の可愛らしいストラトはとても艶やかでまろやかな音色、まるで彼のルックスのごとく。しかも、彼はギターソロになると、斜め上を向いて目をつぶり陶酔しながらセクシーに弾き出すものだから、その音色はさらに艶やかさを増し、田中ギャルはおろか男の僕まで惚れそうになる・・・卑怯だ。青山さんのクラプトンルックなストラトはカミソリのように鋭くソリッドな音、強力な殺傷力。今回は割とギターソロは控え目でリズムギターに徹しているような印象だったが、それだけにその音の特性がいかんなく発揮され、The BM’s中原さんのパンチ力抜群のドラミングと組み合わさって竜巻のような強烈なグルーヴを生み出していた、圧巻。そして、茂さんは個人的に見たかったあの赤色ではなく茶色い方のストラトだったが、その音色は一言“えげつない”、そりゃあもう凄まじいのだ。三人の中で音は最もストラトの王道を行っているような気がするが、でも、途轍もなくオリジナルで、太い、とにかく太い。それは、今までのレコーディングやライヴなど心からやりたい仕事だろうがやりたくない仕事だろうがとかく膨大な音楽経験が血肉化した太さというか、まるで音の説得力が違う。やはりキャリアが成せる業というのがあって、茂さんの熱くて深い轟音ギターを聴いていると、ロックは若者のものという世間の思い込みはアホらしく思えてくる。というか、55歳の茂さんの出す音は今の若い奴らなんかよりよっぽどとんがっているし、そりゃあ相当な不良だ。キャリアを積めば積むほどやさぐれてゆく、それはひとえにクリエイティヴな気持ちを常に持ち続けている証だと思う。ロックギタリストにチョイ悪なんて言葉はダサイ、悪けりゃ悪い方がいいのである。・・・おっと、熱く語ってしまった。リズムに合わせて身体を揺らしステップを踏みながら左右に激しく動き回り、足元に置かれた無数のエフェクターを忙しく操作、モニター用のイヤホンを付けたり外したり、ここぞと言うときは左眉を吊り上げ渋く豪快なギターソロをキめる、と茂さんのアクションも骨硬い系(?)の青山さんや田中くんとは対照的なアクティヴさでビックリだった(あと、妙に気さくなMCも。森○一・・・ハイ○ァイセット・・・ヤ○ザ・笑)。

で、これはやっぱりと言うかしょうがないと言うか、はっぴいえんどの曲をはっぴいえんどの鈴木茂がギターを弾いて歌っているという光景は、そりゃあもう筆舌にし尽くせない感動で。一発目「抱きしめたい」のあの静かに燃える印象的なイントロ、まっしぐらなのです~♪直後の“キュイィィーーーーン”というあの刺激的なチョーキングが聴けた時は、大興奮と共に心で泣いた。そして、鈴木茂の横には青山陽一がいて。実は茂さん作の「花いちもんめ」という曲、以前はそれほど印象に残っていなかった曲なのだけど、はっぴいえんどトリビュートで青山さんの素晴らしく洒落たカヴァーバージョンを聴いて、逆にオリジナルのファンキーなカッコ良さに気が付き、今でははっぴいえんどの中で1、2を争うくらい大好きな曲になった。だから、「花いちもんめ」を茂さんと青山さんと一緒に演奏するというのは個人的にものすごく感慨深く、これまた泣いた。

いわゆるはっぴいえんどフォロワーと呼ばれる人は数多くいるけれど、その中でも、青山さんが最もはっぴいえんどの意志を受け継いでいる人なのではないかと僕は常々思っている。はっぴいえんどが面白いのは、とても叙情的でありつつどっか冷めてる感覚であり、それはそのままメロディー(=叙情的)とリズム(=冷めてる感覚)の関係性にも繋がってくると思うのだけど、はっぴいえんどフォロワーと呼ばれる人たちの中で前者の叙情性やメロディーという側面だけならば該当者はたくさんいても、後者もしっかりと表現しきれている人はあまりいないような気がする。そういった意味で、両者を常に意識し実験し続ける青山さんこそが真のはっぴいえんどフォロワーと呼べるのではないだろうか。・・・なんて偉そうなことを言ってしまったけど、まぁそんなのどうでもいいことで。もちろん青山さんは、はっぴいえんどでもないし鈴木茂でもないし、どこの誰でもない圧倒的に個性的なシンガーソングライターでありギタリストであるというのは、ファンならみんな知っている。

あ、話が少し逸れたので戻してと。演奏されたはっぴいえんどの曲はさらに2曲、伊藤さんの暢気なトロンボーンが効果的だった「さよなら通り3番地」はめちゃくちゃ変な曲だなぁとニンマリ微笑ましく、ラストの「はいからはくち」は茂さんイントロでちょっと手が追いつかなくて苦笑いしつつもギターソロではバチコーン!とド派手にキめ、そして追い討ちをかけるように中原さんの入魂の高速ドラムソロ!そんなもん会場大盛り上がりに決まってる!嗚呼、生きてて良かった、幸せ。・・・とか何とか言いながら、あれが聴けて嬉しかった部門での個人的ハイライトが「100ワットの恋人」間奏の“プォォーーーーーーン”と粘っこく鳴り響くスライドソロだったというのが、自分でも意外だった。元々ホットな『BAND WAGON』の楽曲はさらに熱々で、ものすごい迫力の演奏。なのに、茂さんの頼りなさげなか細い歌声は相変わらず、その両者のギャップはあまりにあり過ぎるのに妙にキモチ良く響いてしまうのはなぜなのだろう?それはもう茂マジックと言うしかない。キモチ良いと言えば、中盤の「8分音符の詩」(大阪のみ、ラッキー!)「ソバカスのある少女」のメロウコーナーもとても味わい深かった。

その日以来、はっぴいえんど含め茂さんのレコードばかり聴いているのは言うまでもない。だって、より一層音がリアルに迫ってきちゃうんだもん、参っちゃうよなぁ(笑)。いやはや、茂さん中心の語りになってしまったが、こればっかりはどうしようもない。思い入れもあるだろうけど、それ以上に生で体験した茂さんのプレイや音力が想像を超えてあまりに凄すぎて、青山さんや田中くんやThe BM’sの演奏まで気が回る余裕が無かったというのが正直なところ。ということはつまり、ひょっとすると僕はこのイベントの真の面白さは味わえきれていないのかもしれない。嗚呼、やっぱりもう一回観れてたらなぁ・・・と感じた人も多いだろうから、次も出来るだけ近いうちに(茂さんの熱が上がっているうちに)是非このメンツでお願いします!と同時に、青山陽一&The BM’sの関西ワンマンライヴも引き続き熱望です!忘れてないっすよ!

・・・長文すぎて、目がシュパシュパしてきた。お疲れさまです。
by kesuike6 | 2007-03-01 20:33 | LIVE
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